2014年3月23日日曜日

不肖・三田登がモノ申す!⑩

安倍軍拡路線が生み出した「はだしのゲン」回収問題
私は幼少の頃から漫画が大好きで、小学一年生にして稚拙な落書きをしては悦に入り、漫画家になることを夢見ていました。当時(1950年代)は貸し本屋が多く残っており、単行本や月刊誌が主流で、一冊が一日5円で借りることができました。私は毎日のように通いました。それが最大にして唯一の楽しみ(今で言うオタク?)だったのです。

1960年代になると、少年漫画も少女漫画も週刊誌が主流になりました。そして、残念なことに貸し本屋も姿を消してゆくのです。その頃には漫画家志望は本格化し、中学一年生の時に地域の仲間に呼びかけて漫研を結成して会長に就任。某少年漫画誌に紹介されたこともあって全国から入会希望がありました。その後に会の運営が大変だったことを覚えています。今では、よき遠い思い出ですが…。

さて、ずいぶん前書きが長くなりました。1973年に週刊少年ジャンプで中沢啓二氏の「はだしのゲン」が連載(その後、いくつかの出版社で連載)されました。当時、私は高校生でしたが、読んで衝撃を受けました。原爆の投下による死の街、死の灰。死骸の山。熱で垂れたがった皮膚を引きずりながらの死の行進。それでも事実を隠そうとする軍部。朝鮮人差別にも鋭い視点で描かれていました。中沢氏が被爆体験者であるが故に、リアルな描写に説得感がありました。唯一の被爆国である日本であるからこそ、その漫画や映画を通したメッセージは、日本中そして世界の学校、図書館で長年に亘って読み継がれてきた名作となったのだと思います。

しかし、これまでなら考えならない動きが近年あることを多くの人たちが心配しています。2012年12月に松江市教育委員会が「子供たちに間違った歴史認識を植え付ける」として市内小中学校で閲覧制限を要請しました。ちなみに同月に第2次安倍内閣が発足しているのは偶然でしょうか。また、本年1月に大阪府和泉佐野市で、「差別的な表現がある」ことを理由に、千代松大耕市長の要請で同教育委員会が市内小中学校で回収されました。東京新聞で、「平和や戦争の悲惨さを伝えるのが、この本の主眼。ずっと学校に置いていたのに、なぜ今、問題視するのか。極めて政治的な意図を感じる」という小学校長のコメントを掲載していました。安倍内閣が教育的権限を教育委員会から首長に移行させようとしている弊害が早くも表れています。

安倍内閣は、議会の議席数を背景に平和憲法の改悪、秘密保護法、集団的自衛権行使、右翼的教育再編、原発再稼働など、日本を「ふつうに戦争に参加できる国」にしようとしています。それが彼の言う「美しい国・日本」なのでしょうが、とんでもない話です。「たかが漫画」と言うなかれ。日本の未来を担うのは子供たちであり、だからこそ子供たちに権力の側に都合の悪い影響があるものを排除してゆく狙いが透けて見えるのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。